
お客様インタビュー
宇治茶ブランドを守る、消費者データとゆるキャラを活用して中国における宇治茶認知度向上を目指す | 京都府茶協同組合
※本記事は2021年6月作成の再掲です。Koeeruの前身となるSyno Japan社が作成しています。
本記事では、弊社のソリューションをご利用いただきましたお客様に、実際にプロジェクトを行った経緯や狙い、活用方法、感想などのユーザーの声をインタビュー形式でご紹介します。
今回は、京都府茶協同組合の岡本様にお話を伺いました。
京都府茶協同組合様とは「宇治茶認知度把握及び向上プロジェクト」において、中国の3都市(上海、北京、広州)における「宇治茶」の認知度調査、その結果に基づく動画広告の制作、広告配信前の動画広告テスト、そして配信後のアンケートによる効果測定など、各プロセスに現地消費者の声を取り入れ、データに基づく施策を実施しました。
プロジェクトの概要に関しましてはコチラよりご覧いただけます。
中国における宇治茶の認知にかかる課題について
まずはじめに、中国における「宇治茶」の認知にかかる課題についてお聞かせください。

弊社CEO 長野

京都府茶協同組合 岡本様
中国の方に「宇治茶」を知ってもらうためには、実際に試飲して味・香・色を体感していただき、宇治茶の良さをわかってもらった上で購入いただくことが重要と考えております。しかし、新型コロナウイルスの影響で訪日観光客が激減しインバウンド消費が見込めなくなり、中国国内へ輸出も難しくなった現在、宇治茶を嗜んでもらえる取り組みが行えないことが大きな課題としてありました。
コロナ禍によって訪日観光客が激減してしまった現在、具体的にどのような影響がありましたか?


コロナ前は、中国からの観光客が宇治にも多く訪れており、とくに平等院などの観光名所には近くの老舗のお茶屋さんがあり、お土産として宇治茶を購入していただいておりました。しかし、そういった機会が現在見込めなくなり、宇治周辺ではお茶の売り上げが激減して厳しい状況が続いています。
中国の方との接点がなくなってしまっているのは厳しい状況ですよね。今回、中国における宇治茶の認知度調査を行うことになったきっかけを教えていただけますでしょうか?


日本国内では、宇治茶は多くの皆様に知っていただいておりますが、世界の方々にもご愛飲いただきたいと考えております。近年では中国への輸出に取り組んでいますが、宇治茶を取り扱っていない中国企業によって日本で長年宇治茶を販売されている企業名と宇治を合わせた商標を取得されていることが大きな問題となっていました。そのような状況の中で、中国国家知識産権局へ「宇治」は日本で著名な地名であり「宇治」を使用した商標は登録されるべきではないという訴えを行ったところ、当局より中国の公衆には知られていないという回答がございました。そのため、実際に中国の方々に「宇治」が知られていないのかを調査する必要があり、今回認知度調査に踏み切ることになりました。
これまで、宇治茶の認知度調査を実施されたことはありましたか?


以前、国内にて簡易的な調査を実施したことはありましたが、データ自体が手元にも残っておらず、活用ができておりませんでした。
事前認知度調査について
今回は、Syno Japanのグローバルリサーチ(海外調査)とその結果に基づく海外マーケティングサービスを組み合わせたソリューションをご提供させていただきました。まずは、事前認知度調査(市場調査)の結果はいかがでしたか?感想や新しい気づき等がありましたら、お聞かせください。


認知度調査の実施前は、中国国家知識産権局のご指摘のとおり「宇治」「宇治茶」を知らないと回答される方がかなり多いと想定しておりました。しかし、認知度調査の結果では予想より多くの方が認知しており、驚いたのと安堵もありました。
たしかに、当初の予想よりも中国国内での認知度は高かったですよね。とくに、訪日経験者と中年層、高年収層では認知度が高い傾向がありました。それに比べ、10代と50代以上、低年収層には認知度が低いことが調査結果からわかりましたが、世代や属性ごとに認知度に相違があることに関してはどう思われましたか?


今までの生活習慣の中で中国緑茶を中心に嗜まれてきた高年層による認知度が低いことは想定内でした。中国では若年層も抹茶を好んで飲んでいることも多く人気もあるので「抹茶」=「宇治茶」が結びついていないという点が一つ課題になると考えました。
私自身、とても興味深かったのが「『宇治茶』の『宇治』とは何を指すと思いますか?」という質問に対して、「日本の緑茶の生産地」と正しく認知をしている人の数の次に多かったのが、ほうじ茶や玄米茶のように「日本茶の品種」の一つとして認識している人の数でした。その結果に関しては、いかがお考えでしょうか?


以前、中国へ訪問した際に雑談程度ですが一般の方に「『宇治』『宇治茶』と聞いて何を思い浮かべるか?」という質問を問いかけたところ、「茶種の一つ」と答えられていたので、中国では「宇治茶」=お茶の品種というのが一般的な認識なのかもしれないと想定はありました。
今回の調査結果をもとに、認知度の低い層へ宇治茶のPRをしていくことになりましたが、調査を通じて取得したデータはどのように活用いただきましたか?


調査の質問項目の一つに、宇治のご当地ゆるキャラである「おうじちゃま」の認知度を図る項目を入れていただきましたが、中国国内での「おうじちゃま」の認知度が高いことがわかったため、動画の登場人物として起用することにしました。どういった年代や属性の人をターゲットにするか、その層に受け入れられやすい動画はどのようなものか、どういった媒体を活用して配信していくかなどを考えていく上でデータが非常に役に立ちました。
ありがとうございます。事前認知度調査は実施してよかったですか?


はい、事前調査をしていなければ全く違う動画が出来上がっていたと思います。中国国内で「宇治」「宇治茶」を知らないターゲット層に親しみを持ってもらうために、宇治のご当地ゆるキャラを活用することをSyno様にご提案いただきましたが、データを通じて「おうじちゃま」の認知度が高いことがわかっていなければ、茶畑の風景や製造工程などのシーンのみで構成された動画になっていたと思います。
今回は主なターゲット層が若年層で、動画広告を配信するプラットフォームをSNSと考えた時に、何が受け入れてもらいやすいかを事前に調査をしてから制作する動画の方向性を決めることができ、事前認知度調査が非常に重要なステップになったと私自身も実感しております。

データに基づいて制作・配信した動画広告について
今回の動画広告制作及び配信がどのように課題解決につながるとお考えでしたか?


動画広告という形での認知の向上をはかる取り組みは初めてでしたが、多くの方々に動画を観ていただくことで「宇治茶」は日本からのものであるという認識をしてもらえればと考えておりました。今回の動画配信を行うことで、抜本的な冒認商標や模倣品の解決に直接結びつくとは想定しておりませんが、その足掛かりになればとは思います。
動画広告制作に関して、どのような点に留意されましたか?


日本における宇治茶のイメージである高級感や製造方法等をそのまま伝えようとすると、わかりにくい部分もあると思ったので「宇治」と「宇治茶」を結びつけるような動画であることを重点に置いて制作いただきました。
制作した動画広告のコンセプトやクオリティはいかがでしたか?


正直、初めてみた時は驚きました。今までの私たちの業界では、今回のようなゆるキャラを活用したインパクトのある動画はなかったと思います。宇治茶を知らない方でも興味を持ってもらえるような構成になっており「宇治」「宇治茶」の要素を十分に入れて頂いたので、非常にクオリティの高い動画になったと思います。
広告配信前の動画広告評価テストについて
今回は制作した動画広告を配信する前に、中国国内の消費者にアンケート内で動画を閲覧してもらい、フィードバックをもらう動画広告の評価テストを実施しました。この評価テストの感想はいかがでしたか?何か気づきなどがあれば教えていただけますでしょうか。


配信するターゲット層やどういった媒体を使用するかなど配信方法が明確になりました。事前に評価していただくことで、予定していたターゲット層や配信方法で進めても問題ないことがわかりました。
海外の市場は、日本の感覚では問題がなくても、翻訳のクオリティや表現の仕方など様々な落とし穴がある場合があるので注意が必要ですよね。とくに中国国内での動画配信は、規制がかかりやすく慎重に進めなくてはならないため、評価テストは必要なステップとなったと思います。

中国国内SNSにおける動画広告配信について
動画配信を通じ、どのような変化が起こることを期待されていましたか?


ターゲットである若年層向けに動画配信を行いましたので、その層に対しては「宇治」「宇治茶」の認知度向上は期待しておりました。それに加え、その層だけでなくSNS上の投稿のシェアなどで他の層への波及効果があることを期待しておりました。
動画広告配信に関しては、どのような点に留意されましたか?


今までの「宇治」「宇治茶」のイメージをできるだけ損なわないようにということ、動画が中国で販売されているお茶を批判していると捉えられないように留意しました。
動画広告配信後の効果測定調査について
動画広告配信後に、実際に動画広告の効果がどれくらいあったのか定量的に測る効果測定調査を実施いたしました。効果測定調査の結果はいかがでしたか?新しい気づきなどありましたでしょうか。


動画広告を配信する前は、「宇治茶を知らない」と回答されていた方が多くいましたが、配信後は広告を閲覧した人で「宇治茶を知らない」と回答した人が0%になったのは、一つ大きな結果になったかと思います。一方、まだ「宇治」が「宇治茶」の産地であると正確に認識していない方が多いことがわかり、今後は「宇治=宇治茶の産地」と正確な認識をしてもらえるような施策が必要であると感じております。
Syno Japanのソリューションに関して
では次に、弊社のグローバルリサーチ(海外調査)と海外マーケティングサービスを組合わせたソリューションが貴組合の抱える課題の解決にもたらした影響はありましたか?


私たちの大きな課題である中国での「宇治茶」の商標問題への解決に今回の調査が直結したわけではないですが、今後PRしていくべきターゲット層や、どういったPRであれば中国の方に受け入れてもらえるかなど、データを通じて把握することができ、非常に参考となる調査になりました。
ありがとうございます。貴組合にもたらした影響はありましたか?


調査を行っていただいている段階で、他の商標の問題が発生して、その際にも中国における「宇治」の認知度が低いと指摘されました。しかし、今回の調査結果から一定の認知度があるということを内部資料として示すことができました。この問題については未だ解決には至っておりませんが、こういった指摘を覆すことのできる裏付けにすることができました。
ソリューション提供者としてSyno Japanを選んでいただいた理由は何ですか?


Syno様に依頼させていただく前に、中国の企業で調査を行いましたが詳細な結果を得ることができませんでした。そこで、JETRO京都様にご相談したところ、Syno様をご紹介いただき、独自の調査方法やグローバルに調査を行われている実績を見て、今回依頼させていただくことになりました。
今後の宇治茶認知度に関するデータ活用について
2021年3月には、中国企業の「京都宇治」商標について、中国の国家知識産権局が無効取り消しを認めましたが、今後の宇治茶の認知度に関する課題はどのようなものになるとお考えでしょうか?


「京都宇治」商標の結果は非常に大きいな成果であると捉えております。「宇治」が中国の国家知識産権局において、使用禁止データベースに登録されるということになりました。今後は、中国国内の方々にも「宇治」が「宇治茶」の産地であることの周知性を上げていくことが課題となっていきます。
その課題に対する貴組合の役割をどのようにお考えでしょうか?


新型コロナウィルスの影響により、中国の消費者に「宇治茶」を試飲等で嗜んでいただける場を設けることができていませんが、今後は様々な形で「宇治茶」を飲んでいただき宇治茶の良さを知っていただく取り組みを弊組合で行っていく必要があると考えております。
そういった取り組みを行っていく上で、今後どのようなデータが必要とお考えでしょうか?


今回の調査結果より詳細なデータを入手することができたので「宇治」が「宇治茶」の産地であることを認知していない人たちに向けて効果的に活用していきたいと考えております。
今後のデータ活用に関して、Syno Japanに期待することはありますか?


データの収集はもちろんですが、分析やその結果に対してのアプローチを今回様々な角度からご提案いただきました。今後も、豊富な経験と知識からバリエーション豊かなご提案をしていただければと思います。
そうですね。今回は、効率的に低コストでデータを収集し、認知度を把握することが調査の主体となりましたが、今後はどのようにデータを活用して宇治茶の認知度を向上していけるのか、例えば「越境EC」のように実際のアクションに繋がるようなご提案もさせていただければと思います。今回、京都府茶協同組様にはデータを活用した先進的な取り組みをしていただきましたが、今後、データを活用した課題解決を考えている自治体や公的機関に対して、何かアドバイスを頂けないでしょうか。


今回、自治体と弊組合が茶業界の今後の展開を行いやすいように、「宇治茶」の商標問題に取り組みました。自治体として、京都府と宇治市との連携することができたことも大きいと考えております。一つの産業や業界の問題に対して、一つの自治体や団体で対応するには限界があると思うので、自治体や公的機関が協力した上で、専門家の意見を取り入れて問題に対応していくことが重要であると思います。様々な課題を解決していく上で、データは重要な根拠になるので、スムーズな問題解決につながるのではないでしょうか。
Syno Japanとの協働について
Synoとの協働でよかった点はありますか?


部門ごとのスタッフの皆様は、非常に細やかに連絡をいただき迅速にご対応いただけました。また、部門を超えてきちんと情報共有をしていただいていたので、スムーズにやりとりを進めていただくことができました。
Synoに改善して欲しい点はありますか?


特にございません。
Synoの担当スタッフに関しての感想はいかがですか?


動画制作において、制作サイドとこちらの意向の間で、進めにくい状況もあったかと思いますが、丁寧にご対応いただき一つ一つ進めていただけました。様々なこちらの要望に対して、柔軟に皆様ご対応いただき改めて感謝いたします
今後、弊社と取り組んでいきたい施策はありますか?


「越境EC」は魅力的だと思います。直接、宇治へ来ていただけなくても商品を嗜んでもらえるコミュニケーションの場として、様々な活用方法としての可能性を感じています。
コロナの影響でインバウンドの激減し、日本のモノを購入してもらえなくなった今、とくに「越境EC」は注目されていますよね。今後も貴組合との取り組みを楽しみにしております。

Koeeruはお客様の課題に合わせたアンケート構築をお手伝いします。ご相談、ご質問等あれば、下記のボタンよりお気軽にお問い合わせくださいませ。
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